
― バッテリーは「自社で作ればいい」という時代ではない
電気自動車(EV)シフトが世界的に進むなか、トヨタが福岡県苅田町で予定していたEVバッテリー工場の着工を二度延期したという報道は、国内外で大きな話題となった。
EV販売は世界で20%超の伸びを示しているにもかかわらず、工場計画は後ろ倒し。この逆行にも見える判断はなぜ起きたのか。
表向きには「市場動向を注視しながら慎重に判断」という説明だが、実際にはそれだけでは説明がつかない。
個人的には次の2つの理由ではないかと考えています。
① トヨタが自社生産に踏み切るほど、現行バッテリー技術は「勝ち筋がない」
② ターゲット市場の外に工場を作るのは、競争上の合理性が低い
実際の本音は?
バッテリーの価格と性能がまだ満足できていない
現在、EVバッテリーの市場は中国勢が圧倒的な競争力を持つ。
CATLやBYDが世界シェアの半分以上を握り、価格・性能・生産規模のどれを取ってもトップクラス。
その結果、バッテリーはモジュール化された汎用品になっている。
トヨタは勝てていない競技に無理に参入する理由がない
自社工場を急いで建設しても、
が待っている。
さらにトヨタ自身が「次世代電池=全固体電池」に勝機を見出している以上、
今回のバッテリーを大規模投資で内製化する必然性が薄いのでは?
「勝負は次のフェーズでつける」
というトヨタらしい合理性の現れと考えます。
EVバッテリーは重量物で輸送コストも高く、調達先の地理的条件が競争力に直結する。
世界のEV需要が急伸しているのは 北米・中国・アジア新興国、欧州 。
対して日本市場はEV比率が依然として低い。
そこに巨額投資で大型バッテリー工場を構えるのは、グローバル戦略の観点では合理性が低い思う。
市場の中心地に生産拠点を置くのが世界標準
実際に、
主要プレイヤーは、需要地のそばで生産している。
仮にトヨタが苅田町で生産を開始した場合、
輸送コスト等もありますが、米国ではIRA(インフレ抑制法)があり、北米製バッテリーでなければ税制優遇が受けられない。
日本に工場を建てても北米競争で勝てない。
延期の裏にある現実的な理由だと思います。
今回の着工延期は、事業判断だけを見れば極めて合理的だ。
この状況で拙速に投資する意味がない。
トヨタは、今の潮流に迎合するよりも、次の勝負所を見据えて静観する
資金も人材も世界一の会社は長期戦略を選べるわけです。
苅田町バッテリー工場の着工延期は、決して消極策ではない。
これらを背景にした、極めて論理的な判断だ。
EVシフトが加速する中で、
どこに投資し、どこで戦うべきか
石橋を叩いて壊すレベルで冷静に見ているのは、トヨタならではだと思います。